Party Live ::Act 21-25

第21話「アムルレス」

2004/12/06(月) 男爵

「御神木?」

寝不足や先刻のからかい、その他もろもろに続き警告無しの威嚇射撃で頭に血が上りつ つあるザックに代わって、矢を放った問題の女戦士に質問をしてみる。

「そうだ。この大樹は我等『アムルレス』の御神木、貴様等汚らわしい男共が触れて良 い物じゃ無い!」

アムルレス、聞いた事があった。たしか大学の授業で王国軍以外の代表的な戦闘集団の 講義の中で出てきていた。男を拒絶した女だけの戦闘部族でその歴史はかなり古く、何よ り誇りと掟を重んじる事から王国軍じゃ『森の女帝』と呼ばれていた。

『汚らわしい』か・・・・・・かなり好戦的でいらっしゃる。しかしどうしたものか、目の前 の女戦士も周りを囲んで身を隠している方々も友好的な話し合いは望めそうも無い。

あまり機嫌を損ねる前に此処から離れたいが・・・・・・

「それが理由で矢を放ったのか?誇り高きメスザル。」

ザックの奴の堪忍袋からボロボロと漏れ始めた。

『メスザル』呼ばわりされた女戦士や周りから放たれる殺気が濃くなったのは言うまで もない。

穏便にこの場を立ち去る事は難しくなった。

「お・・・・おい、ザック。」

「あ?」

「抑えろ。謝れ。剣をしまえ。」

「ぁあ?」

慌ててこの場をどうにか好転させようとする俺に対してザックは、寝不足で充血した目 で睨んで来た。うぅ、恐い・・・・・・。しかし、此処で引く訳には行かない。

「頭を冷やせ。この馬鹿。闘う訳には行かないだろうが。」

「俺がこの程度の奴等に負けるとでも思うのか?」

駄目だ。こいつ、もう周りが見えてねぇ。どうしようか頭をフル活動させていると、後 ろから服を引張られた。

「ヴァイスちゃん。ヴァイスちゃん。」

「ん?」

振り向くとリリアが苦い顔をして視線を在らぬ方向に向けていた。その視線を追ってい くと、弓に矢を番えて此方に向けているアムルレスの方々。放たれる殺気はもう痛いほど。

リリアはリーネを抱きかかえながら、震える手で俺の服を握っていた。

俺は、リリア達を背中にかばい、弓矢の警戒をしながらザックに最終警告をした。

「ザック、一つ言っておくがな。・・・・・・・・・・リーネは、魔法が使えないんだぞ。」

「・・・・・・・・・・・・くっ。」

カラン―――――――

ザックは、剣を捨て降参の意を示すのだった。

ギィ―――――――

扉が開き外の空気が入ってくる。この季節にしては風が冷たい。どうやら何時の間にか 外は日が暮れてしまったようだ。何故そんな事も分からないのかと言うと、此処には窓が 一つも無く、さらにたった一つの扉にはつい今し方まで鍵が掛かっていた為だ。此処はお そらくアムルレスでは、牢屋にあたる場所なのだろう。あの後俺達は、女戦士達に手足を 拘束されて彼女等の集落まで運ばれ、此処に放り込まれた。とは言えリリア達は違う場所 に運ばれたので、今彼女等がどうしているかはわからない。だが今他人の事を心配するだ けの余裕がある訳じゃない。なぜならこの部屋には、死体や白骨などは無いものの、明ら かに肉が腐った匂いが染み込んでいた。つまり、この部屋で腐るまで放置されたか殺され た『何か』が居たって事だ。

ドサッ―――――――

開いた扉から何かがこの部屋に入れられた。良く見るとそれは、ボロボロになったザッ クだった。他の場所に連れられていったと思っていたら、どうやらリンチにあっていたよ うだ。

「また明日ね、剣士さん。」

「う・・・・・・ぐっ・・・・・・畜生が・・・・・・。」

「バ〜イ。」

バタン―――――――

扉が閉まり、光源の無い部屋の中は闇に閉ざされた。

そんな中俺は、ザックの苦しそうな寝息をBGMに脱出の計画を考えていた。

第22話「宵闇の洸筋」

2004/12/06(月) 無重力

何処かで梟の啼く声が聞こえた。真っ暗に閉ざされた光の無い空間でも、不思議と大体 の時刻を認識することが出来る。尤も、その半分以上は腹時計に依存しているというのも 事実ではあったが。

刻にしておそらく丑三つ時。草木も眠りにつき、ただ夜闇に紛れる妖怪たちが宴に明け 暮れる時の半ば。昨夜の時点で十日月を過ぎたあたり、今夜はほぼ満月に近いと言えるだ ろう。

「まあ、あれだ。とりあえずここから出ないことには話にならん。」

空腹に耐えかねて寝るにも寝られないヴァイスは、傍らの痩せ男に先程から進まない会 話を幾度か繰り返していた。

「ああ。腹が減っては戦が出来ん。ってな」

けろっとした顔でザックも頷く。ここは第五大学にこの人あり、と囃された若き剣聖。 多少ぼこられたぐらいではびくともしない。多分。

「しっかし、飯の一つも出さないとは。兵糧攻めなんて今時流行らんぞ。」

やるせない怒りをぶつけようにも、厚く塞がる牢獄の壁は殴る蹴るでも全くびくともし なかった。単純な木製の扉であるにも関わらず、一切の衝撃は吸収されてしまう。もしか したら何らかの魔法的な防備が施されている、と読んだ。

しかし所詮はこの面子。魔法の知識はからっきしだしなぁ。と、ヴァイスは情けなくぼ やく。

「せめて、剣の一本でもあればいいんだけど。」

ザックの長剣やヴァイスのカタール、及び鎧一式の類は全部没収されている。所詮はこ の牢獄も木造りのやわな出来だから、刃物か何かあれば簡単に破れるかもしれない。

それに脱出した後の防衛のためにも武器その他は必要不可欠だ。逆に言えば、武器無し で大きな行動に出るのはあまりに危険すぎる。

「ん?剣か。それならあるぞ。」

ザックは至極当たり前といった調子で言ってのける。はて、周り何処を見回してもそん なものは微塵にも見当たらないのだが。

「実は“拳”でしたっていうオチじゃないだろうな。」

握りこぶしを作って見せるのだが、あしざまに笑われてしまう。どうやら本当にあるら しい。この密閉空間の中、何をどうやって調達してくるのかは知らないが。

「ほれ。」

ザックが放って寄越したのは、万年筆くらいの短い筒だった。見たところたいした装飾 も施されておらず、無論刃のやの字もない。ためしに手のひらを滑らせて見たが、傷一つ つかなかった。

「これの何処が剣なんだよ。」

「ばーか。これはこうやって使うんだよ。」

ザックはおもむろにそれを奪い取ると、まるでそこに真剣があるかのように袈裟懸けに 構えてみせる。いまだそれはただの筒のままだ。

「キーワードは、ええっと。何だったかな。」

さもはっきり覚えている様子で、ザックは苦笑する。 ― これだけは言いたくなかった んだがな、と小さな声で付け加えた。

「『アリス様は世界一可愛い』、と」

「なんじゃそりゃ」

宵闇の中で何の反射係数も持ち合わせていなかったその粗末な代物が、突如として輝き を放つ。いや、それ自身が輝いているのではない。その先端からレーザのようなものが無 限に放出されているかに見えた。

緑色の光彩は真っ直ぐと闇を貫き通しており、1m ほどのところで綺麗に収束していた。 遠目から見れば、たしかに剣に見えなくもない。いや違う。これはとんでもない魔法の剣 だった。

「お、おい。こいつは一体...」

「なに、古い知り合いの家からちょいと拝借してきたんだ。」

一方女性陣。アムルレスの連中にたらふく料理を頂いてご満悦な様子。男どもの窮状な どすっかり忘れてしまっているとかいないとか。でもそれはまた別の話。

第23話「復讐のザック」

古津

ザックの古い知り合いの魔術の剣で脱獄した男衆。

とは言っても2名しかいないのだが。

彼らはいの一番で己の武器を探す。

しかし、彼らの武器は案外近くにあった。

ザックが一番最初に向かった小屋に置き去られていたのだ。

「ちっ、さすがにもうここにはいねぇか…」

ザックが自分の愛剣と鎧を身に着けながら呟く。

「いないって、誰がだよ?」

同じように自分の武器を身に付けるヴァイス。

そのヴァイスの声が聞こえていないかのように無視し、ザックはすでにレーザーの切れ

たペンを胸にしまい、小屋から出た。

「何だって言うんだ?」

ザックの態度に悪態を付けながらヴァイスは部屋を見回す。

所々に染みがある。

「…はは〜ん。なるほどねぇ」

この小屋はザックがリンチにあった小屋のようだ。

あれだけボロボロにされれば、男と言えども動けないと判断したんだろう。

しかし、アムルレスの女たちはザックの、いや男の噂など知らないのだろう。

帝国軍人になりえたザックの実力を知らない女たちは腕を折るまではしなかった。

「…やべぇ…、ザックを止めねぇと!」

思ったが早いか、ドアを開け外に行ったザックを追おうとした時、ドアが開いた。

外には女の髪を引きずりながら戻ってきたザックがいた。

いつの間に縄を手に入れていたのか、ザックに髪を引っ張られたアマゾネスはすでに簀

巻き状態だ。

「お、おいザック」

ヴァイスがザックに詰め寄る。

「なんだ」

ザックの目が血走っている。

あちゃー、この女もザックのリンチに参加してたのか…。

ザックはこう見えて執念深いからなぁ…。

そうこう考えている間にザックがアマゾネスを吊るし上げ、首に剣を突き付けている。

「リリアさんとおまけはどこだ?」

「…………」

ザックの問いに誇り高きアマゾネスは微動だにせず、そのままザックを睨み付ける。

「もう一度だけ聞く、リリアさんとおまけはどこだ?」

「…………」

やはりアマゾネスは答えない。

「まぁ、吐くとは思ってはいなかったが…」

言葉が続くと思った瞬間、ザックの手が動いた。

「きゃああああああ!!」

鈍い音と共にアマゾネスの腕が普通ではありえない方向に曲がっていた。

「さっきは何もしなかったが…今は違うぞ…。最後だ…」

「ぞ、族長の家…族長の家で貴方の仲間のお二人は歓迎されているはずよ…」

ザックが全てを言う前にアマゾネスが喋った。

どうやらザックが本気なのに気が付いたらしい。

そんなザックを見て、ヴァイスは肩に手を置き、それ以上何かをするのを止めた。

「ふん。戦士が屈辱を忘れると思うなよ…メスザル…」

アマゾネスを吊るしてある縄を切り、アマゾネスを地面に下ろすとザックが言う。

「まずは外の掃除だ」

きょとんとしたヴァイスが窓から外を覗くと、いるわいるわさっきの悲鳴を聞いて駆

けつけた仲間のアマゾネス。

「アンタも馬鹿ね。あれだけの数の私達アムルレスの戦士を相手に生きていられると

思ってるわけ?」

ここぞとばかりにアマゾネスが言う。

しかしザックは冷たい微笑をして答える。

「20人程度か…本気で戦えば、1分もかからないな」

ザックが言うここでの本気は多分、”殺す”事だろうとヴァイスはわかっている。

一度だけザックが本気でかかってきた時の一太刀を受けて生きてた俺だからザックと

はうまく行っているのだ。

「ザック」

「わかってるさ」

ヴァイスの言葉にそれだけを返し、外に出て行った。

第24話「非情剣舞」

2004/12/30 トラねこ

――ザックは再度周りの女達を見渡し、鞘を付けたまま剣を片手に持つ。

ザックは長らく『本気』を出していなかった。しかし、それは力や技術面に対してで はなく、精神面――。戦に巻き込まれた時、身に付けた在り方。

感情が奥に潜んでいく――

鍛錬した技術が浮き彫りになり、頭は冷静に状況を分析する――

周りは人のカタチをした――

――『敵』。

そして、最後の雑念が頭を過ぎる…

――出来れば、あの二人にはこの姿を見せたくない…と。

―――――

ヴァイスは疾る。ザックが鞘に収めたまま剣を持つという意味、恐らく手加減なしの 攻撃をするつもりだ。殺す気は無いが死ぬかもしれない…という意味で『わかってる』 と答えたのだろうか…。もし、死者でも出したら俺達は村を敵に回すと言うのに。

――今でも、ザックの本気の一太刀を覚えてる。その一太刀には一切の迷いがなく、 生きてる事、その剣筋を防いだ事が奇跡的に思えた。迷いがないという事は躊躇せずに 人を殺す事ができるという事だ。それだけでただゾっとした。

…とにかくこの状況を打破しなければ。ザックを止められるのは一人しかいない。 呑気に歓迎されている二人を連れ出さなくては――。

―――――

悲鳴を上げた番兵を引きずって、小屋から男が出てきた。番兵――ルエイダは動かな い。意識がないのか…それともまさか――

「貴様…殺したのか?」

男は無言。表情一つ変えない。これだけの危機的状況にも関わらず、焦りも、恐怖も 、怒気も感じられない。ただあるのは冷たい殺気――。…ルエが生きてるとしても交渉 する雰囲気なんて微塵も感じさせない。だとしたら――

「貴様っ!!よくも姉をっ!!」

「待てっ!」

弓を構えるルエの妹に静止の声をかける。案の定、ルエの首を掴み身を隠している。 つまり、弓を避けるための盾として引きずって来たのだ奴は。行動は正しいが、人とし て最低だ。ルエの妹も状況を理解しただろう、怒りのあまり構える弓矢が震えていた。

まず、ルエを凝視する。胸が上下に動いている…ということは意識を失っているのだ ろう。片腕は折れたのか不自然な曲がりかたをしている。これで、ますます弓を使うわ けにはいかなくなった。

「――驚いた。剣士という生き物が女を盾にするとは…」

「そうだっ!!恥をし――」

言葉を終える間もなく、男が突進してきた。盾を捨て、弓を構えていた仲間へ向けて 一撃、二撃。一撃目で構えた状態の手首を強打し、二撃目で脇腹へ…それだけで崩れる ように仲間が前のめりに倒れていく…。

「――このっ」

「弓はやめろっ!同士討ちになるぞっ!!」

「囲めっ!奴を休ませるなっ!!」

叫び、槍を構える。私の一喝で仲間が一斉に動き出す。各自各々の武器を構え円陣を 組んでいく。しかし――

疾い…流れるように仲間の剣を小手毎払い、隙をついても小手で受け流す。その一連 の動作に無駄がなく、動作はまるで剣舞。そして、嵐の様な攻撃の隙を見つけては確実 に一撃を入れ仲間の数を減らしていく。

――甘かった。当初の陣を崩され、この状況…下手をしたら全員…死ぬ。ルエを犠牲 にしてでも初撃の弓で蜂の巣にすべきだった。…が、そんな判断できる筈もない。

ならば今からでもそれを実行すべきだ…。個々よりも村の存続を優先させる――それ が、アムルレスに生きる女達の生きる上で学んだ…術。

「陣形っ!!"貫弓"!!」

声と共に、男の周りにいた仲間が武器を手放し、一斉に敵の手足にしがみ付く。どん な一撃を食らっても相手を放す事はない。…皆が死を覚悟しているからだ。

「たかが独りで我がアムルレスの狩団に敵うと思うなっ!!」

全力で疾走する。狙いは首下――槍で奴の体を貫通させる。これが決まらなければ、 仲間もろとも弓で射抜くしかない。

疾走途中、奴は左腕にしがみ付いていた仲間を振りほどいた。仲間の片腕は捻れてい る――

槍の間合いに入る直前。奴は右腕にしがみ付いている仲間の頭を左腕で掴んでいた。 そこからは時間が嘘の様に緩やかに思えた。右腕を上げ、左腕を下げ、腰の上下と回転 の運動を利用して、掴まっていた仲間を投げ――いや、振り回す。槍が届く前に仲間の 踵が頭部側面に直撃する。視界は真っ白になり、体の自由が効かなくなる。草の匂いが 近くなる。意識が遠のく中、最後の気力を振り絞って叫ぶ。

「――っ!!後方弓部隊、一斉しゃ――」

「ザックちゃん、ストップ!」

「――即刻、作戦を中断せよ!!」

中断の声…。遅いじゃないですか…とにかく、後は頼みますよ、エルさん

―――――

決死の覚悟で族長の家に乗り込んだが、リリアとリーネは呑気にお茶をしていた。事 情を説明する。

「…狩団が向かったんだ。直に鎮圧しているだろ…」

「そのザックとやらが死んでるかもしれないが…」

と言って、ズズズ…と茶を啜ったのはザックに弓を向けた女戦士だ。

その後、なんとかリリアとリーネを連れ出した。結果、余計な人までついてきてしま ったが…

―――――

「…なんて状況だ」

女が言っていた狩団は、半数が地面に伏せていて、二人がザックにしがみ付き、残り は弓を構えていた。

ザックはリリアの声で動きを止め、序々に普段の雰囲気に戻っていく。

「交渉決裂だな、リリア…。あの男は殺さないと気が済まない」

と女がぽつりと言う。既に明確な殺意を放っていた。

「では、一騎打ちでこちらが勝った場合、考え直してもらえますか?」

「…考えておこう」

一歩前に出て、ザックと向かい合う女戦士。倒れている仲間は回収したのか、今、場 は二人しかいない。

「…そういえば、メスザル呼ばわりした借りを返してなかったな」

「…貴様の部下にはお世話になったがな」

交錯する視線。…戦いが始まる。

第25話「一難、去る間も無く・・・・・・」

2005/01/19(水) 男爵

(うぅむ・・・・・・どうしたものか。)

ヴァイスは、ザックとアムルレスの族長(エルヴァーニ・ミグドリア。通称エルと言 う名前らしい)の戦闘を見ながらこの状況をどうしようか考えていた。

一騎打ちと入っているが実際此処は思いっきりアウェイな訳だし、戦闘終了後無事に 帰れるかわからない。現に数人のアムルレスがヴァイス達を取り押さえる事が出来るよ うに死角に回り込んでいくのを確認したし、時折こちらを殺気の篭った目で睨み付けて くるヤツなんて、してないヤツを見つける方が難しいくらいだ。さらにこのアムルレス は、実力社会の結晶でその族長とは一族の守護者であり誇りである。それをたたき伏せ て周りが納得するのか甚だ疑問だ。

―――ギィィィィィン―――

ザックの剣とエルの手斧が一瞬交差し甲高い音を残して離れていった。

エルは、確かに強い。女の細腕から繰り出された一撃とは思えない程にすさまじい破 壊力、柔らかい体、安定したバランス、そして何より森の民特有のしなやかで素早い動 き。そこら辺の兵士や戦士なら全く歯が立たないだろう。しかし相手は大陸内五指に入 るであろうザックだ。中々良い戦いをしているように見えるが、学生時代嫌と言うほど ザックと組み手をしてきたヴァイスにはエルとザックの決定的な技量の差が見て取れた。 つまり余程の不運が無い限りザックに敗北はありえなかった。

「ねぇ、ヴァイスちゃん戦況は?」

「苦戦してるように見えるけど、攻撃は見えてるし防げないほど重い訳じゃない。さ

らに言うなら彼女の戦術は我流だろうから無駄が多い。殺す訳にはいかないから時間

をかけて徐々に弱らせいる最中。OK?」

「さすがヴァイスちゃん。目だけは良いね。」

「ははは・・・・・・・・・・。」

「目に身体が追いつけばねぇ・・・・・・・・ふぅ。」

「・・・・・・・・・・・・・・。」

悲しくなるから今の会話は記憶から抹消。ぐすん。

はてさてどうしたものか。ザックには無駄に高いプライドせいで謝罪は望めないし。 この場を丸く治める話術があるわけでもないし。裏技も無いし・・・・・・・・。

―――グラッ―――

「・・・・あれっ?」

「どうしたの?ヴァイスちゃん。」

「今・・・・・・揺れなかったか?」

「??・・・・・・揺れてないと思うけど。」

「・・・・・・そうか。」

(気のせいか・・・・・・。)

ヴァイスは、そう思いながらも何気なく外を見てみると其処には我が目を疑いたくな る様な光景があった。

「なぁ。」

一番近くにいたアムルレスに声おかけてみた。相手は嫌な顔をしたが此方はそんな事 を気にしてられない。

「あっちにあるでっかい木は、アムルレスの御神木か?」

「あっち?・・・・・・ああ、そうだが。」

それがどうかしたか?と言う顔で答えられた。しかし此処からが本題だ。落ち着いて はっきりしっかりと・・・・・・。

「・・・・・・動いてるように見えるんだが?」